気胸の主な5つの治療法と再発率について説明します。ただし相次ぐ再発により長く苦しまないようにするため、遅くとも同じ肺が2度気胸になったら必ず胸腔鏡手術を受けて下さい。それでは説明していきます。
胸腔鏡手術
現在気胸の再発率を下げるのに最も有効な治療法です。全身麻酔下で体に3ヶ所穴をあけ、胸腔鏡を用いブラを切除します。術後稀にブラが再発する事があり、特に手術する年齢が低いと再発するリスクが高くなります。とは言え再発率は3~10%で、他の治療法に比べれば圧倒的に低いです。ちなみに気胸を発症している状態での全身麻酔は危険を伴うため、ドレーンで空気を抜いてから手術が行われます。また気胸を発症していない状態での手術も可能で、この場合手術前にドレーンを入れる必要はありません。ただいずれの場合も、術後は必ず脇腹にドレーンが入っている状態となります。通常は片肺の手術が多いですが両肺同時の手術も可能です。1週間程度の入院になります。
胸腔ドレーン
局所麻酔で胸腔内に管を通し、肺から漏れ出た空気を吸引する処置です。ドレーンを入れる頃には既に空気漏れが止まっている事も多いですが、ブラの切除を行わないため再発率は50%ほどで、一度再発すると以降の再発率は手術しない限り80%以上と言われています。これは自然治癒と変わらない値です。ちなみに管を入れる場所によって痛みが異なり、ほぼ無痛の事もある反面、運が悪いと傷口や胸の痛みで身動きできず夜も眠れません。またドレーンには幾つか種類があり、電気で動くタイプと電気がなくても動くタイプがあります。後者のドレーンは移動時にコンセントの取り外しをせずに済むので便利です。空気漏れがなければ3日程度で退院できます。
ソラシックエッグ
ソラシックエッグとは気胸の症状が比較的軽い時に使用できる、携帯式小型ドレーンの事です。普通のドレーンによる治療と異なり入院する必要がないため、通勤通学その他外せない用事がある場合に重宝します。再発率は普通のドレーンと変わりません。
自然治癒
胸腔内の空気が胸膜に吸収されるまで安静にする治療法です。希望的観測として、何度もブラが破れればカサブタができて丈夫になるんじゃないかと思うかもしれませんが、7度気胸を発症させた私のブラにカサブタらしき物は一切ありませんでした。そのため何度再発を繰り返してもブラの強度は上がりません。むしろ脆くなっていきます。ドレーンによる処置と同様に初回の再発率は50%ほどですが、一度再発すると以降の再発率は80%以上に跳ね上がるので、まず再発する物だと思って下さい。
胸膜癒着術
ブラを切除しても再発してしまう患者に行う最終手段です。肺と胸膜を癒着させる事で空気が漏れ出る空間がなくなり、ブラが破れたとしても重症化しなくなります。ただし癒着を行うと、以後肺の手術や胸腔ドレーンの挿入が困難になるというリスクがあります。さらに処置は胸腔内に薬品などを流し込み炎症を起こす事で癒着させるため、激痛を伴う事でも知られています。
補足
上記5つの治療法の他に注射針で肺から漏れた空気を吸引する処置や、現在では殆ど行われなくなりましたが開胸手術もあります。
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